幻の魚「チヌ」

私は小さいころ、近くの堤防によく釣りに行った。
釣れる魚はアジや10cmぐらいのメジナ。それでも十分楽しい時間だった。

その幻と初めてご対面したのはその時だった。

本格的な格好をしている隣の釣り人。
マキエをヒュイッと投げる…

華麗だ

ウキは30mぐらい沖にあるだろうか
手前でしか釣りが出来ない子どもには、あのウキは手が届かない未知なる世界。

ぼーっとウキを眺めていた次の瞬間

ウキがスッと入る。

大きく合わせると、5m40の磯竿が大きな弧を描く。
堤防にいる人はみなその釣り人に注目する。

数分間格闘しただろうか、タモで掬うとそこには銀色に輝く立派な魚体

チヌだ!

釣りあげた瞬間、釣った人に対してみな尊敬と悔しいが要り混ざった不思議な感情。

子どもながらにあの銀色の魚体に言葉にならないカッコよさ、そして憧れがあった。

いつかは自分も釣ってみたい!

それからというもの、本を買って調べたり、実際に磯に行ってみるが

釣れない。

仕掛けを色々と考え釣りに行く。
釣れない。

何回ボウズになっただろうか、やはりチヌは幻なのか。

結局大人になるまでチヌを釣りあげることは出来なかった。

時は流れて社会人となる。

大人はやはり賢いものだ

また、この情報社会が味方をしてくれる。
チヌを釣るにはどうしたらいいのか。
時期、場所、仕掛け、マキエの必要性など、ネットを見ればすぐ答えが出てくる。
しかも今度は渡船というスペシャルなアイテムも選択肢にある。

それでは出陣。

沖磯に上がる。時期、場所ともに申し分なし。当然マキエも用意。

それとなくやってみる。

マキエをヒュイッ。

おおーこれこれ

さあーおチヌちゃんきてちょーだい…

そしてその時だった、大きく竿が曲がったのだ!

隣の人の

チヌだ

おーやはりいたか。
さすが沖磯「渡船スゲー」

それから何投もするが
釣れない

ムムッ
あれっ
あら~

終了してしまったw

おチヌ様、貴方は私が嫌いなのでしょうか。

リベンジやな。

そしてまた勉強す。
チヌは底の方にいます、フムフム。だからウキの下を長くして…フムフム

よし実践

同じとこで渡船
前回やっていなかったことを色々と試してみる。

ウキ下の調整、仕掛けの投入、マキエのピンポイント投下。

今度はどうだ!

ウキに全神経を集中させる。
おチヌちゃん、おチヌちゃん。さあ出ておいで。

数十m先のウキの頭はオレンジ色だ、そして次の瞬間
視認できるオレンジ色が海の中にスッと吸い寄せられる。

消えたっ

竿をピッと合わせる

ガッツーん‼

何や!この重量感は何なんや!
竿がひったくられる

落ち着けー、落ち着けー。気持ちとは裏腹に心拍数は急上昇。
へっぴり腰で耐えるのみ

ドキドキドキドキ
もうちょいや。頑張って~(心の声)

おっ見えた。タモや!
手が震える、

うまく入らない。

よっしゃ入ったぞ!

その魚体は銀色に輝く。

チヌだ!

放心状態のまま、心臓の音が耳まで伝わる。

やったー‼

ついに念願だったチヌをゲット!

幻だった魚を自分の力で釣りあげたのだ。

その時の感動は今でも忘れない。
長い長い戦いであった。

それからというもの。
一度分かっちゃうとあとは早い。
本当に不思議
あの憧れの魚はよく釣れるようになった。

今では微妙な変化で釣果に差が出る程度(と言ってもまだまだ下手くそですが)。
地域情報(場所、季節等)が分かれば、初めて場所でもチヌが釣れるようになった。

一緒に釣りをした知り合いの社長からは「チヌ男」の称号を頂いた。今度は「チヌ王」に昇格できるよう、これからも精進しようと思うw

これが私とクロダイ(チヌ)の出会いである。

なかなか釣れない経験があったから、なおさら嬉しかったかもしれない。

チヌは全国各地にいるし、やることをしっかりやれば釣れる魚です。

みなさんも重量感のあるあの引きを是非体験してみて下さい。
以上

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